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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
111回


2008年 3月



著者:甲斐切清子
 



JCCのあるJl.Cipakuの周辺には、石を投げたらあたる距離(比喩ですよ、比喩)にざっと十軒は韓国料理店があることでわかるように、韓国人がたくさん住んでいる。おかげで、ときどき韓国人の方が日本語やインドネシア語を受講したいとおいでになる。先日もロビーで、スタッフが一生懸命お客様に英語で説明しているのを見て、「はいはい、私の出番ね」とばかりにしゃしゃり出ようとしたら、スタッフが「先生、こちらのお客様は韓国の方です」。


  10年以上も前になるが、「日本人と韓国人と中国人は区別がつかない。肌の色も髪の色も、背丈も顔つきも着ている服の傾向もほぼ同じだ」と主張した私に、教え子のMが言った。「いいえ、先生、日本人と韓国人と中国人はまったく異なります。私には区別がつきます」。ほ〜〜〜、区別がつくとな。聞かせてもらおうじゃないの。

その元学生が教えてくれた、「日本人と韓国人と中国人の見分け方」とはこうである。
  
  @     韓国人や中国人に比べると、日本人は背が低い。

A     韓国人の目は細い。日本人の目は小さい。

B     中国人のイブイブの化粧は目が大切。日本人のイブイブはファンデーションが大切。

C     韓国人や中国人は日本人より声がでかい。


  なるほどぉ〜、とそのときは思いきりうなずいた。今から10年も前のことである。そういえばその頃は私もきっちり日本人だとわかってもらえた。私はけして背は低くないし、目はしっかり細いし、声もでかい。なのになぜ日本人として判定してもらえるわけ? 率直な疑問を前述のMにぶつけた。すると彼女はしたり顔で答えた。


  「ま、たたずまいと言うか、立ち居振る舞いとか、そんなところかな」


  なんとも生意気なコメントである。だが、私も韓国や中国へ行ったときに、顔つきが同じなだけにその一挙手一投足に微妙なずれを感じたものだった。インドネシア人にしてみれば、あれこれ言わずとも簡単にわかるのかもしれない。


  ところがいまや日本人のスタンダードにも変化が見られ、身長は
男性が170センチ以上、女性も160センチに手が届きそうな勢い。それにお化粧も、「目力(めぢから)アップ!」なんてキャッチコピーがあるくらい目が中心になってきている。たしかに電車内でお化粧している女の子たちも、ファンデーションよりアイメイクにたっぷりと時間をかけているようだ。


  

さて、JCCの近くに女性専用のマッサージサロンがある。エカというマッサージの腕のすこぶるいいスタッフがいて、けっこう通っているのだが、そのエカが先日失礼きわまりないことを言ってくれた。

「先生は日本人に見えないね!」

奇跡の手が私の肩の辺りをもみほぐしていたときに、彼女が何気なく言った。

「あ、そう?」

私はマッサージの気持ちよさにうっとりしながら答えた。そのコメントは意外ではない。なぜなら在インドネシア15年となった今、「先生は日本人には見えないね!」と、よく言われるようになってきたからだ。

「じゃ、なに人に見えるってわけ?」

ツボを押さえられた喜びに、あ〜、そこそこ、そこもうちょっと…と、よだれをすすりながら訊いてみた。

すると、予想通りの答えが返ってきた。

「中国人だね〜」

そりゃそうだよ、この目のサイズからして返ってくる答えが、「インドネシア人」であるわけがない。ましてや、「オーストラリア人」とか「トルコ人」とか「ロシア人」に至っては、ジャカルタに雪が舞う可能性よりも低い。だがとりあえず、「どうしてなのさ」と尋ねてみた。答えは「そりゃ目が小さいから」。

「?」

これは、10年前の常識に照らし合わせると、実に説得力のない答えである。日本人も中国人も韓国人も、細いか小さいかの微妙なニュアンスはさておき、とにかく目が大きくないことには変わりない。だから、「先生は目が小さいから、日本人ではなく中国人に見える」というのは、なんとも合点のいかない論説なのである。

「え、だって日本人も目が小さいじゃない?」

私はうつ伏せでのモゴモゴ語で反論した。

エカから返ってきた言葉はこうである。

「あ、先生。日本人の目はそんなに小さくはないよ〜」

「ん? じゃ、中国人は」

「中国人の目は小さすぎるのよ〜」

「・・・・・・」

はたして彼女はこの会話に含まれている以下の方程式がわかっているのであろうか。


 
先生は中国人に似ている中国人は目が小さすぎる先生は目が小さすぎる中国人に似ている
先生は目が小さすぎる


  

そういえば数年前にこんなこともあった。私の行きつけのサロンに友人を連れて行った。その友人もそのサロンを大変気に入ってくれ、一人でも行くようになっていた。

ある日私がそのサロンに行くと、なじみのマッサージスタッフが、「今日は友だちと一緒じゃないの?」と訊いてきた。「一緒じゃないよ。最近彼女、一人で来てるでしょう?」と問いかけると、彼女はうっとりとするような顔で、こう言ったのである。

「アタシ、あの人をマッサージするときには緊張して手が震えるの。だって、本当に本当にきれいなんだもの」

これもまた、この彼女はわかっているのだろうか。この短い会話の中に、
 
 
友人をマッサージするときは、あまりの美しさに手が震える甲斐切をマッサージするときには震えない甲斐切はゼンゼン美しくない

 という方程式が成り立っていることを。そりゃあ、ない目を大きいと言ってもらおうとは思わない。だが、その会話の一つ一つからどんな結論が導かれるかを熟考して、サロンのお姉さんたちには発言してもらいたいと願う、マッサージのしがいのある小さい目の日本人である。

  


 


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