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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
55回


2002年 1月



著者:甲斐切清子
 

 

みなさま、新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

  いやあ、しかし去年の12月は参りましたね。レバランとクリスマスが立て続けにやってきて、もう、 何がなんだかわからないうちに年の瀬を迎えた感じでした。レストランやホテルに入っても、いったいどちらの 飾り付けをしてよいのやら悩んでいる様子が手に取るように見え、かくいうわたくしどもの学校もいったい クトゥパットとクリスマスツリーとが、どうすれば調和の取れたデコレーションになるのかかなり頭を悩ませました。 クリスマスツリーにクトゥパットを吊り下げるのが一番簡単そうですが、それじゃあ各宗教の方々にお叱りを受け そうなのでやめました。実は今も悩んでいるところです。だってこの原稿は12月に書いてるんだも〜ん! (ばらすなよ、オイ=編集部の声)

  さて、2002年初回は、そのレバランに関してのお話をしたいと思う。なんでかというと、去年の レバラン時に私はインドネシア滞在9年目にして初めて知ったことが多々あり、目からうろこ! だったからである。 去年はイスラム教徒にとっては複雑な思いの残る年になってしまったと思うが、それでも彼らの信仰への取り組み は我々平均的な日本人とはまるで違う。「宗教は?」と聞かれて、「仏教…かな?」と答える私たちとは根本的に 異なる。ただし、彼らの間でも信仰の度合いは人によってそれぞれ異なることは前回にも「豚食」を例にとって 少し触れた。
  そこで、レバランである。レバランは、平たく言えばイスラムのお正月である。そのお正月の前に行なう のが1ヶ月にわたる断食。貧しい人々の気持ちを理解するために行なわれるというこのイスラムの修行は、 お日様の出ている時間帯に飲食を断つものである。食事や飲み物はもちろん、うがいや歯磨き、口臭スプレーも 口に入れてはならない。一般に、空腹より喉の渇きの方がつらいというが、自らを厳しく鍛える人は唾液さえも喉を 通さないと言うのだからかなりの苦行であろう。それゆえに、私はこの8年間、その厳しい修行をしている人々を 前にして食べたり飲んだりするのを控えてきた。それが同僚としての優しさだと信じて疑っていなかったのだ。
  それが今回とんでもない情景を目撃したのである。
  11月16日早朝、教員室には事務スタッフCが、すでに黙々と仕事を始めていた。私が「断食は今日から? 」と聞くと彼女は、「はい」と、いつもよりやや低めのトーンで答えた。そこに、「おっはよーございま〜す!!」と 元気よく入ってきたのがM先生。ジルバップをかぶっていかにもという雰囲気をかもし出している敬虔なイスラム 教徒である。ふと見ると片手になみなみと紅茶の注がれたマグカップ。それを凝視する私にM先生は、「せんせー、 私は宗教省の決めた断食開始日から始めるから、明日からなの。D先生は他の宗教団体の決定に従ってるから 今日からなんですよ」とごくごくそれを飲みながら解説してくれた。だが、Mよ、私の疑問と困惑はそんなことでは ないのだ。
  それを説明する前にもうひとつの事例をあげよう。その日は1ヶ月弱にわたる、ある機関の語学研修が 修了式を迎える日で、定例として式の終了後にみんなで軽食パーティーをするようになっていた。そして私は パーティー直前に気付いたのである。 「あ、今は断食期間だからイスラムの先生たちは食べられないじゃない!」
  だが、そこにいたある教師はにんまりしてこう言ったのである。
  「せんせ、今日断食してるのはL先生だけなんだよ。V先生とR先生とT先生はキリスト教徒で、I先生と D先生と私は生理中だから食べても大丈夫なの?  ラッキー!!」 …それって、ラッキーとかっていう問題なの だろうか?
  ついでにもうひとつ語るならば、断食が始まってまもない頃、私が日本からのお土産(広島名物もみじ饅頭) を教員室に持っていったときのことである。「断食だから6時過ぎてから食べる?」と言いながら教員室のテーブルに 置くと、待ってましたとばかりにキリスト教徒のV先生がやってきて、「あ、ぜ〜んぜん、かまわない、せんせ。 みんなが食べたり飲んだりしているところで断食を貫いてこそ神様からの評価は高くなるんだから。ね、D先生!」 と、もみじ饅頭の包みをほどき始めた。そしてそれをほとんど見せびらかしながら、「D先生、おいしいよー」と みんなで食べているのである。博愛精神などかけらもないスタッフであった。
  そういうわけで去年のレバランには、私は断食をしている人への遠慮がすっかりなくなってしまった。 朝一番のコーヒー、昼食のインドミー、なんでも飲んで食べて、あまりの気のつかわなさは酷だったかなと、 ちょっと反省もしている。

  反省と言えば、去年のレバラン前に私は他にも反省することがあった。昨年の11月に学校で、 「日本人の方のためのレバランに関するセミナー」というものを行なった。レバランがイスラム教の大切な行事と いう認識はあっても、それに関する色々な習慣はあまりわからないという日本人の方が多いと聞いて、インドネシア を理解するひとつのきっかけになればと主催するに至ったのである。
  セミナーは回答者を迎えてのQA形式。回答者としておいで頂いたのは、イスラム教徒のインドネシア人、 キリスト教徒のインドネシア人、インドネシア人と結婚した日本人などなど…計5人。参加者はもちろん100% 日本人。最初に断食とレバランに関して簡単な説明があったあと、参加者からの質問の時間になった。やはり、 質問は具体的な事柄が多かった。具体的と言うのはとにもかくにも数字である。レバランボーナス(THR)の額、 帰省のための交通費、レバラン休暇の日数。これについては多くの皆さんが、頭の隅で、「お手伝いさんの言わ れるがままに渡しているのではないだろうか」「交通費は本当はもっと安いんではないだろうか」「レバラン休暇を 与えすぎているんじゃなかろうか」と疑いの気持ちとスッキリしない気分を抱いていらっしゃる事だろう。かくいう私も そうだった。だが、そのセミナーで私は愕然とした。回答者の一言一言にわが耳を疑った。なんと、全てにおいて 私は平均より少なかったのである。はっきり言って平均の半分しか渡していなかった。その内容は要約すると 以下のようになる。
  @ THRは最低1ヶ月分のお給料。長く勤めてくれたり働きのいい人には2、3ヶ月分。
  A 交通費は帰省場所によって異なるが、レバラン時期は切符の値段が跳ね上がるので通常2倍。
  B レバラン休暇は平均2週間。場合によっては3週間。
  C レバラン時にはボーナスだけでなく、服や装飾品などのプレゼントも。「自分で選んで」と現金を渡してもいい。
  実際、私はお手伝いさんにも運転手さんにも、これまで毎年ずぅぅぅーっと、THRはきっかり1ヶ月のみ、 交通費は通常料金のみ、レバラン休暇は移動日含めて1週間、レバランプレゼントなど存在さえも知らなかったと いうとんでもない悪徳主人だった。ごめんね、5年勤務のラトミ、3年勤務のサムちゃん。これからは感謝の気持ち をきちんと形にします(お歳暮風)。だから今年1年もよろしく〜!             

         


 


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