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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
65回


2003年1月



著者:甲斐切清子

  

 インドネシア人は日本人をケチだと思っている。どこからケチだと判断するのかと尋ねたら、たとえば 日本人の買い物のし方だと例をあげてくれた。日本人はお店に入って商品の値段ばかり見てると言う。 店に入ると商品を手にとって即、値段を確認する。そして隣の商品を見て値段確認。次の棚に移り値段確認。 その下の棚の商品をまたまた値段確認。「しかもっ、しかもですよ、センセー!」と、尋ねたインドネシア人の学生は 言った。
  「しかもですよ、それを繰り返して店中の商品の値段をみーんな見ておいてですよ、センセー!!」
  これが言いたいがばかりにこの話題に入ったのであろう彼女の声は、みるみるトーンが上がっていった。
  「ふんふん、店中の商品の値段をみーんな見ておいて…、そいでどうなの、え?」
  私もそのトーンにノせられてやや興奮気味。そこで我が意を得たりとばかりに彼女はフィニッシュを決めた。
  「そんでもってね、センセー、なーんにも、ひとっつも買わないで出ていっちゃうんだよ〜、信じらんなーい!!」
  そのひとことで私はふと我に返った。それはもしや私のことではないか? 品物を手にして、値段を見て、 ほかに安いのはないかと隣の棚をも物色して、あ〜あ、思ったようなのがないなぁーとなんにも買わないで店を 出ていっちゃうてのは、まさしく疑いもなくこの私のことではないか。君たちねぇ〜(インドネシア人の君たちですよ)、 ちっちっちっ…(右手の人差し指を左右に振ってくださいね)。だいたい買い物という行為は、品物を見て値段を見て フトコロ具合に折り合いがつくかどうかで決定されているのではないですか? いいものでも思った以上に 高かったら買わないし、格安だったら大量に買いこんでしまう―そんなふうに買い物というものは、品質と値段の バランスが購買意欲を決定していくのではないですか? 私ら日本人はその基本にのっとって行動してるのです。 それのなにが悪いのでしょうか。それのどこがケチなのでしょうかっ。おのれ、ゆってみーーーーー!!!
  その勢いに押され、学生は「ほかにもね、センセ、あるんですよ、日本人はケチと判断される材料が」と、 急ぎ追加してきた。「なにっっ!」とにらむ私に彼女は習いたての日本語で言った。「それはね、ワ・リ・カ・ン」
  「日本人ってさぁ、センセ、複数でレストランに行くと、お勘定のとき、小銭までみんなで細かく払い合ってるでしょ? あれってどう見てもケチくさいんだよね」というのが彼女の意見だ。
  ならば君たちは複数でレストランに行った場合、支払いはどうしておるのだと尋ねると、「簡単だよ。 今回はアタシ、次回はアンタって感じで変わりばんこに払うわけ。うれしいじゃん、その方が。ご馳走したりされたり してるみたいで。めんどくさくないしね」と言う。
  これを聞いた日本人は100人が100人、私と同じ疑問を持つと確信して私はここにそのとき述べた意見を 書きとめる。私はこう言ったのである。日本人としての誇りを胸に、きっぱりとこう言ったのである。
  「ちょっと待ったぁー! それはおかしい。たとえば昼御飯のケンタッキーが二人分32,400ルピアで、晩御飯に行ったマクドナルドが二人分35,700ルピアだったら差額の3,300ルピアはどうなるのだ。マクドナルドを担当した人は損ではないか」
  すると彼女は私以上にきっぱりと言い切ったのである。
  「だからセンセェ〜、それがケチなの! そんな小さいことまで考えるのがケチって証拠なの!」
  はぁー、なるほど。ん〜、そう言われりゃそうかもしれないねー。日本人のケチはその辺の思考システムが 要因しているのかと、しばしその論説の奥深さに感心し、説得力の強さに感服する。そして同時に胸の奥深いところ で、「だが君たちよ。君たちがこの日本人のワリカンを嘲り笑ううちは、君たちの万事における大雑把さと詰めの弱さ と計算の苦手なところは、変わらないのだろうねぇ」と、憂いたりする私でもあった。

  ところで、ケチと倹約は異なる。ケチは「買わなきゃいけないものを買わない」。倹約は「買わなくても いいものは買わない」。ついでに言わせていただければ、「買わなくてもいいものまでガンガン買ってしまう」のは 浪費。もしあなたが、「買わなきゃいけないものだけを買う」という人であれば、いたって正常な消費者です。 ご安心を。さてそれではここで唐突ではありますが、みなさんの日イ対抗ケチ度&倹約度チェックをさせて いただきます。

問題A 次にあげた物の中で、あなたが捨てるのはもったいないと思うものに○をしなさい。     
(  )アクアのペットボトル (  )日本のお土産の菓子箱     
(  )ガスの切れた100円ライター (  )去年のカレンダー     
(  )使用済み割り箸      (  )ちょっとほつれができた服     
(  )インクの出なくなったボールペン (  )壊れたカセットケース     
(  )ふちが欠けたりひびの入ったりした食器         
(  )1回しか使っていないオアシス(このネタがわからない方はブリタジャカルタ11月号をお読みください)

問題B 次にあげた行為の中で、あなたがケチくさいと思うものに○をしなさい。      
(  )書き損じの紙の裏をメモに使う      
(  )チップを渡すか渡すまいか躊躇する      
(  )レストランなどで優待券や割引券を使う      
(  )お茶碗にごはん粒を残さないようにきれいに食べる      
(  )レストランやタクシーで500ルピアのおつりをきっちりもらう      
(  )一つのものを買うのに何軒か店を回ってみて最終的に決める     

  では分析していきましょう。まず、問題A。これは、○が多ければ多いほど日本人の本質をなくしつつ あるということはおわかりいただけるでしょう。3つ以上○があるようでしたら、かなりインドネシア人化が進んでいる と考えられます。これはケチとか倹約などの問題ではなく、その国の人たちのものの価値観の問題です。 そしてこの傾向は当然その国に長く住む外国人にも見られます。ちなみに在ジャカルタ十年の私は10項目中、 ○8つ。インドネシア人化80%といったところでしょうか。
  次に問題B。典型的日本人ならば、6項目中5つは○が記入されることでしょう。かくいう私も5つです。 実は、これは日本人の行為としてインドネシア人の目に奇妙に映るものです。ただ、インドネシア人の中にも これらの行為を日常的に行なう人もいますが、彼らの頭の中にお金持ちとしてインプットされている日本人が こんな行為をするということに、どうやら問題があるようです。
  こうしてみると私は、ケチ度&倹約度に関してはインドネシア人化が進んでいるにもかかわらず、 典型的な日本人の部分を根強く残しているという、とても中途半端な人間になってしまっているようだ。 しかも上記の問題Aと問題B、合わせて16項目中13項目が○ということは、かなり筋金入りの本格的正統派ケチに 近い状況。そういえば私は、バリ・ングラライ空港で群がるポーターのアンちゃんたちに、「ケチ〜、 ケチケチケチィィィー!!」と罵倒されてもへっちゃらである。「これだけあげれば喜ばれるかな」と思ってチップを渡して「ケチ」と言われるのはショックだが、「ま、こんなもんだ」と思って渡せば「ケチ」と言われても「その通り。私はケチな女なの。アンちゃん、運が悪かったわね」と笑っていられる。

  …と、新年早々こんなケチなテーマで申し訳ございませんでした。なにはともあれ、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたしますぅぅぅ〜。  

 
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