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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
77回


2004年4月



著者:甲斐切清子

  

  「A型は、穏やかに相手に会わせているように見えても、心の中では頑として自分を守っている」。
   ある日、この文を目にした私は、「当たってる!」と驚き、「するどい!」と感心し、「ばれたか!」と降参した。 「他人の目を気にする」とか、「気が小さいゆえに、他人によく気をつかう」とかは、よく言われるA型の特徴だが、 人の意見を聞くふりしてほんとは聞いちゃいないってのが、私にとっては新説で、正直、まいった! って感じだった。
   性格判断なんて当てにならないというかたは世の中にたくさんいるだろうが、これを人生の支えとして 日々を過ごしている人はほとんどいない。大抵が、お茶のお供か酒の肴、もしくは日本語授業の会話のトピックで ある。
    実際この文を見つけたのは、日本語教育の某テキストの中であった。引き続き読むと、「A型は完全 主義者でプライドが高く、人に軽蔑されるのを何より嫌う」、「自分のプライドを傷つけないために、自分の本心とは 逆の表現を取る」とある。くー、しゃくなぐらい当たってる。というより、なんで私ってこんなに典型的A型? これって、 統計通りってこと? 私ってつくづく平凡な人間なんだなぁ。
   そういえば性格判断は、血液型の他にもある。たとえば星座。これは私の場合、乙女座である。女性と してはうれしい名前の星座だが、これもだいたい、慎重に行動をとる堅実家が多いという。干支はというと、「ばた ばた貧乏」の酉。そこらのくずをつっついて生きていける小市民は、他人と足並み揃えて歩くことに全神経をそそぐ。 これらをまとめると、A型・乙女座・酉年生まれは、やはり、おもいっきり「気が小さい小心者」なのである。
   でも、私がこれを語ると、友人は決まって、「まっさかー、どこがよー」と言う。気をつけてものを言って もらいたい。A型・乙女座・酉年生まれは傷つきやすいのである。なんてったって気が小さいのだ。「じゃあ、 どうして毎月あんな原稿を恥ずかしげもなく人様に公表できるわけ?」と、信じようとしない方のために、今日は その具体例をお話する。

   大昔のことである。かといって恐竜がいた頃の話ではない。私が東京で暮らしていた頃の話だから、 今からかれこれ20年前のことである。就職待ちをしていた私は、喫茶店のDJのアルバイトをしていて、毎日、中央 線で中野から新宿まで通っていた。
   ある日、私は息を切らして電車に駆け込んだ。広島にある実家の前を走る呉線だったら、1本逃すと 20分から30分待たなければならないが、東京の電車なんて行っちゃった先から次の電車が入ってくる アナウンスがあるんだから落ち着いて次の電車を待てばいいものの、あの頃は朝ぎりぎりに起き、ぎりぎりに部屋を 出、ぎりぎりに電車に乗るというのがひとつの行動パターンになっていた。
   飛び乗ったとたん、ピーという音とともに閉じたドアを後ろに私はほっとし、乱れていた呼吸を深い息で 整えていた。すると、先にドアの脇に立っていた、貯金箱の穴のような細い目で、陰気なムードをあたり一面に 発散させていた30歳前後の女性が、ぴくんと身体を引いてこう言ったのである。
   「近づかないで! 気持ち悪いから」。
   き、き…? きもち…わるい??
   たぶんそのときの私は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていただろう。そして情けないことに私は、 その言葉の持つ無礼さに気づくどころか、すっと身を退けたのである。なんてまぬけなやつ? 私って〜!!  「あ、すみません」と言わなかったことだけが救いといえば救いである。なんで間髪を入れずに、「そんな方は電車 なんかに乗らず、運転手付きのリムジンででもご出勤されたほうがよろしいんじゃございません?」と言えなかった んだろうか。
   その頃、親しくしていた友人にこの話をしたら、「言わなきゃ、甲斐切ちゃん、そういうときは」と言われた。 その人は以前、電車のシートに足を組んで座っていたら、前に立った初老の男性に、組んでいた足をぱんと 叩かれたそうだ。そのとき彼女は即座に、「足を組んでいたことは申し訳ございませんでした。ですが、わたくしの 体にむやみに触らないでください」と言ったそうである。あっぱれ!
   また、もう一人の友人は、自分の結婚式の案内状を郵送するために、郵便局の窓口まで行って、 「お願いします」と差し出したところ、窓口の職員が、うんともすんとも言わず忙し気にその束を受け取り、無造作に 集配かごに放り投げたのだという。直球型の性格の彼女はすぐに、「ちょっとあなた。その態度はなんなんですか。 結婚式というのは人生最大の行事。その招待状といえば、送る人間にとって大切な大切なものなんですよ。それを 放り投げるとはけしからんではないですか!!」と叱りまくり、所長まで呼び出して頭を下げさせたという。おみごと!

   私は彼女たちの武勇伝を聞いて、これからはきっちり言い返そうと誓った。だが、持って生まれた性格は、 そうは簡単には変えられないものなのか。私は20年たった今でも、使用言語が変わったここインドネシアでも、 言い返せないでいるのだ。特にお手伝いのラトミに対してである。

   先日、東京から友人が遊びに来た。彼らは南国の果物がすこぶる気に入って、たった2日間の滞在 なのに、果物を山ほど買ってきて食べきれずに置いて帰って行った。その翌日、突然お客さまが来ることになった ので、ラトミに、「果物、まだあるよね」と尋ねたら、彼女はにこにこしながら、「うん、あるよ。リフィにやるわさ」と言う。 リフィはラトミの可愛がっている向かいの家の子どもである。いつ、誰が、リフィにやっていいと言ったんだと内心 思いながら、「来客があるから、まずお客さんに出してからね」と私は言った。そしたら彼女はみるみる不機嫌に なり、こう言ったのである。「客の分ぐらい新しく買いな」。ぶ、ぶ、ぶっとばそーかー!!
   また、その2週間ほどあとのこと。ラトミが拾ってきてたいそう可愛がっている猫が体調を崩し、入院する ことになった。ラトミが拾ってきたと言っても、事実上うちの飼い猫だから餌代も治療費も私の財布から出る。 入院費が5日間で100万ルピア近くかかると聞いて仰天した私だが、これを断れば死なせることになると聞き、 「とにかく値切って。 安くしてもらって」とラトミに伝えた。そして5日目。病院に電話すると、退院できるから連れに 来いというので、ラトミに今日必ず連れに行くようにと司令を出した。なのに、帰宅したら今日はいろいろあって 行かなかったという。頭の中に100万ルピアがへばりついている私は言った。「なんで行かなかったのよー、 それだけで費用が高くなるのよ〜」と。すると彼女は私を一瞥してこう言ったのである。「ふん、たかだか入院費が 一泊増えるだけじゃないのさ」。ぐ、ぐ、ぐやじぃぃぃー! 
   「こいつー、誰がお金を払うと思うとるんじゃー、誰が拾ってきた猫なんじゃー、わかっとるんかぁぁぁー」と、 私の心は叫んでいた。でも、そのときもあのときも、万事につけ私は言い返せないのである。でももしかして、 これはただ単に、核心をついた一言を速攻で返す賢さがないだけかもしれない。

   それにしても、なんて気の小さい小心者、A型・乙女座・酉年生まれ。今度生まれてくるときは、 B型(マイペース)・さそり座(シャープなイメージ)・虎年生まれ(出世しそう)を第一希望としたい。

 
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