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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
90回


2005年 10月



著者:甲斐切清子

  

7月号と8月号の「さよならラトミ編」をお読みいただいた方々から、「大変でしたね」 「お寂しいでしょう」と、励ましのおことばをたくさんいただいた。それに気を良くした私は、今月号を「はじめまして ヤンティ編」と題して、新しいお手伝いさんについて書かせていただくことにした。よろしくおつきあいのほどを。

  ○愛想がよくて丁寧 ○清潔 ○まじめに仕事をする  ○健康   
  突然だが、これが何かおわかりであろうか。私が新しくお手伝いさんを捜すにあたって、基準にした 項目である。実は、これはそのまま、うちの元お手伝いさんのラトミに足らなかったことである。彼女は愛想が悪く、 無礼で、台所などの管理が不衛生きわまりなかった。日常的な掃除仕事や留守番を怠りがちだった。そしてよく 風邪をひき、そのたびに不機嫌で仕事をほっぽらかしていた。だから私が、新しくお手伝いさんを捜すときに特に この点に重点を置いたのは、当然とも言えよう。そして厳守事項としてあげたのが、以下の項目である。
@ きちんとした態度
A 返事をきちんとする
B 笑みをもって対応する
C 口ごたえをしない
D 掃除は隅から隅まで、毎日きちんとする
E 甲斐切の目に入るところに私物を置かない
F JCCのスタッフに敬意を示す
G JCCのお手伝いさんとは待遇が違うことを認識する
 そう、ラトミは、@主人に対して横柄きわまりなく、A返事を発することはまれで、Bましてや笑みというもの はほとんど知らず、C口ごたえは日常茶飯事、D私物どころか、朝起きたらリビングにむかいのうちの子がいたり して、EJCCのスタッフを自分の部下のように扱い、GJCCのスタッフが連休ならアタシも連休さ、などということを 平気で考える思考回路を持った奴だった。だから、新しいお手伝いさんには、上記のことを期待したのである。   
  そして、新しいお手伝いさんがやってきた。名前はヤンティ。うーむ、以前勤めていた教師の名前と 同じだなぁ。それより、学校のお手伝いさんと同じ名前ではないか。JCCのスタッフの混乱が早くも予想される。
甲斐切 「ヤンティに玄関まわりを掃除しておいてって伝えて」
スタッフ 「ヤンティに言ったら、もう今朝したそうです」
甲斐切 「今朝、私が見たときは汚かったよ」
スタッフ 「いいえ、今見たらきれいになっていますよ」
甲斐切 「え? 今、私のうちへ行ったの??」
スタッフ 「???」   
  …とまぁ、こんな具合に。これからはいちいち、「うちのヤンティ」とか「学校のヤンティ」とか言わなきゃ ならんのか。ちと面倒。   
  だが、とにもかくにも新しいお手伝いさんの登場である。素直にうれしい。新鮮な風が吹いてくる感じだ。 第一印象は、「無口そう」であった。笑顔も少なそうである。むむ、これはもしや愛想が悪いのでは…と一瞬心配 したがそうではなく、初対面で緊張していたようである。無口なのではなく無駄口がない、笑顔が少ないわけでは なく、へらへらしていないだけであった。   

  彼女に来てもらって、まず何がうれしいかというと、大きく2つある。   
その1−掃除がまめ。ラトミはとにかく拭き掃除をしない奴だった。いくら私が言っても、フンとかハンとか言って聞こうとせず、気がつくと自宅は埃の館となっているのが常だった。それに比べてヤンティは、毎朝飽きることなく拭き掃除をしている。おかげで床用洗剤がなくなるのが早い。ありがたい現象だと思うことにした。   
その2−声がかわいい。ラトミのダミ声にうんざりしていた私には、このソプラノボイスは天使の声に聞こえる。   
  そして、この2つだけでも100点満点をあげたいくらいなのに、彼女は日本料理にも関心を示してくれて いる。私が作る端から覚えていっている。特筆すべきはお弁当である。私は新しいお手伝いさんが来たら、お弁当 生活を始めたいと思っていた。なぜなら、朝食抜き、昼も夜も麺類という、片寄った食生活にピリオドを打ちたかった からだ。できたらお弁当の中身も、健康のために日本料理で統一したいと考えていた。もともと料理もうまく、 日本料理に関心を持つ彼女が、お弁当のおかず作りに苦労をするわけはなく、肉団子、厚焼きたまご、 こんにゃく煮、きんぴら、ポテトサラダなどなど、みるみるうちに覚えていった。

  だがここで1つ問題が発生した。お弁当の中身の入れ方である。たぶん、食べ物の盛り方は、万国 それぞれ感覚の相違があると思う。以前ここでも書かせていただいたが、日本人は器に7割がた盛るのが 美しいとされているが、ここインドネシアは違う。7割がたしか入っていないコーヒーやナシゴレンはけち臭く見えると 言う。それから日本人は色彩にうるさい。きれいな彩りがあってこそ、おいしそうに見え、食欲をそそられるという わけだ。インドネシア人が食している物を見ると茶色だらけで、緑の添え物なんてほとんど見ないような気がする。 ハンバーグ脇のブロッコリー、うどんの上のねぎ、サラダの中のきゅうり、ましてや口に入れてもらえることの滅多に ないお飾りパセリの存在など、インドネシア人にとっては不可解の極地であろう。   
  お弁当の盛りつけはその究極である。あの限られたスペースに、数種類の彩り華やかなおかずを、 見た目美しく入れなければならない。はめ込まねばならないとってもいいだろう。その細かい技術ときたら、まるで ジグソーパズルのようである。それが外国人にとっては難しいのである。   
  たとえば、ウインナー。ウインナーは、普通に食べるときには、お皿に横に長く置かれている。だからと いってお弁当の中にも横に並べていいか。否! 1センチの厚さに切った厚焼きたまご。お弁当の高さが3センチ だったら、それを3枚きれいに重ねて入れていいか。否! こんなことは、お弁当で育った日本人だったら誰でも わかる。でも、ナシチャンプルで育ったインドネシア人のお手伝いさんにはわからない。このあたりの微妙なセンスを どうわかってもらえば…と悩んでいたら、あるときを境に簡単に解決した。   
  8月の帰国の折りに、私は彼女に「暇なとき、これを見てね」と一冊の本を渡した。それは「おいしい お弁当の作り方」という本であった。たくさんの写真が載るその本を見て、彼女は視覚からその微妙な美的感覚を 養っていったのであろう。帰国してからのお弁当は、ごはんの上にグリンピースが飾られてあったり、3色おにぎりが 鎮座していたり、たこちゃんカットのウインナーが踊っていたり、毎日かなり楽しませてもらっている。   
  だが先日、お弁当の蓋を開けてあんぐり。なんと、お弁当の中心部に堂々「冷奴」が。ご丁寧にネギまで のっかっている。確かに私は晩ご飯によく冷奴を食す。しかもネギを載せていないと気がすまない。でも、お弁当に 未調理の豆腐は入れない。生ネギも入れない。まさか、「おいしいお弁当の作り方」の中で、紹介されていたわけ では…。とりあえず、生豆腐、生ネギ、生卵はお弁当には入れないということを、急ぎ教えておかねばなるまい。

 
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