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よもやまクラブ by Ibu KAIKIRI                           

 

日本語教師七転八倒物語
94回


2006年 3月



著者:甲斐切清子

  

ひさしぶりにスタッフとカラオケに行った。総勢10数名で行くとマイクの奪い合いになるので、今回はひそかに日本人教師2名、インドネシア人教師2名で赴いた。
  以前は、ファミリーカラオケといえばクラパガディンの「ハッピーパッピーカラオケ」しかなく、よく使わせてもらっていたが、残念なことに、ハッピーパッピ−の日本語カラオケは、日本語カラオケリストが「ま」で終っていた。なぜかわからないが、いつ行っても、どのリストを見ても「ま」の1枚目までしかないのである。布施明「マイウェイ」はあるが、ユーミンの「守ってあげたい」はないのである。「ま」の2枚目以降から、「み」「む」「め」「も」、そして「や行」も「ら行」も、ましてや「わ行」など、どこをひっくり返してもないのである。だから、インドネシアでヒットした「ラブストーリーは突然に」を学生と一緒に歌いたくても、「ら」のページがなくてだめ。大好きなテレサ・テンの「別れの予感」を披露したくても「わ」がないので歌えない…。ハッピーパッピ−のスタッフに、「ね、これって、途中で終ってんの。『ま』までしかないんだよ、どうしてだろう?」と訴えても、日本語によるカラオケリストを見たところでインドネシア人の彼らにわかるわけがない。わかったとしても、「ふぅーん」で終ってしまうことは火を見るより明らかである。たぶん、カラオケセットを輸送していたときに船が嵐に遭って(?)、カラオケリストのページが吹き飛ばされ(??)、でも受け取ったインドネシア人は日本がわからないから、そのままをフォトコピーして商売を始めちゃった…という図だな、これはきっと。だがうれしいことに最近、都心にたくさんファミリーカラオケ店ができた。そこで、今回はそのひとつ、ウィジャヤセンターにあるカラオケ店に行って来た。
  まず、ハッピーパッピ−しか知らないインドネシア人教師Dは、「わー、先生、ここ、『わ』行まであるよぉーーーっ!」。そんなあたりまえのことで、大げさに喜ばないっ! と言いながら、私はさっそくテレサテンの「別れの予感」を入力。だって、これまで歌えなかったんだから、この歌、ジャカルタじゃあさっ!! と、私が一番喜んでいたりするわけである。
  
  さて私はこの日参加したインドネシア人教師に、カラオケで守るべきことを話して聞かせた。総勢10数名もいると、人への思いやりも気遣いも吹っ飛んでしまうので、これを機に二人に教えておき、彼女たちから正しいカラオケ文化というものを継承していってほしいと願ったからである。
  「いい? カラオケというものはね」−私は前例を挙げながら厳かに語り始めた。
  「まずね、リスカみたいにひとりで続けて入力しちゃだめ。たとえばね、デシ、ドラ、マヤ、ラストリ、スワンシー5人で行って、デシが曲捜しが早く、スワンシーがとにかく歌いたくて、この二人がばんばん入力して、デシ、ドラ、スワンシー、デシ、スワンシー、ラストリ、デシ、スワンシーじゃ、デシやスワンシーが3回も歌っているのに、ドラやラストリは1回ずつしか歌えなくて、しかもマヤにいたってはのんびりしているから、ずーっと歌えなかったりするでしょ。同じお金を払っているのに不公平じゃない? 順番を守ればそういうことはなくなるのよ」
  「それから、アデのように人が入力した歌を、片っ端から遠慮なしにもう1本のマイクで歌ったりするのは神経疑うわね」
  「それに、ヤンティのようにほかの人が入力した歌を、あたかも自分が入れたように歌ってしまうのは、もう、極刑」
  「そうそう、会社の上司やお得意様と一緒に行くときには、相手に18番ってのがあったら、歌わないほうが無難かな」
  私がこんこんと述べ諭している言葉を聞きながら、隣で日本人のR先生がうん、うんと頷いている。すると、私の話を真剣に聞いていたインドネシア人教師2名は深く頷いてこう言った。
  「うーむ、そうですか先生、カラオケにはたくさんルールがあるんですね」
  その一言を聞いて私は思わず、「ん?」と首をかしげた。ルール? ルールと言われるとどうもね〜。先に述べたことは、ルールと言うほど明確な「規則」ではない。ルールというのは、野球で3つストライクを取ると打者はアウトとか、人は右・車は左とか、日本語スピーチコンテストは7分を超過すると減点とか、そういうのがルールであって、他人の入力した歌を横取りするのはまずい…というのは、ルールではない。言ってみればマナーだ。ボーリング場で隣のアプローチに人が立ったときには、こちらは少し待つとか、道を譲ってもらったらクラクションを鳴らしてお礼を言うとか、日本語スピーチコンテストのときに携帯電話のスイッチを切るとか、そういうことは、ルールというよりマナーである。思いやりや気遣いによる行為で、それに反したからといって、罰則を受けるわけでもない。そうして考えると、マナーっていうのは誰かが決定することではなくて、みんなの気持ちのいいと感じる行為の集計みたいなものなんだな…。  
  
  さて、カラオケの正しい楽しみ方ミニセミナーを終えて、いよいよカラオケが開始されたわけだが、セミナーの成果は一長一短。たしかに歌う数は守られはしたが、「えっと、さっき、甲斐切先生が歌ってSが歌って、私だったから、つぎR先生、えっと、そして甲斐切先生、そのあと私…? いや、Sのあとが私で、それからR先生…ということはもう2曲ずつ入れてるから、そのあと3曲目のときには、えっと…」と、いちいち口頭説明がうるさい。それぐらい頭に記憶して、さりげなく進めようよ、と思いつつ、私も、「いや、違うよ、さっきDが入れた曲は消えちゃってたから、Dは2回歌っていいんじゃない? え、ちょっと待って、もうそれ、歌ったんだっけ?」と、それに輪をかけてうるさい。まぁ、カラオケルームって、こうやってうるさくなるわけだ。

  また、カラオケをやっていると、その人の性格や人間性が浮彫りにされる。実像が見えてくるとも言えよう。たとえば、「立って歌わないと感じが出ないのよね〜」と、仁王立ちになって歌い始め、ワンフレーズ歌ったあたりで、「このマイクちょっと調子悪いみたい」と言って、友人の持っているマイクを取り上げ、再び歌い始めて、2フレーズ終ったあたりで、「ここのカラオケ演奏、オリジナルじゃないから歌いにくーい!」と主張するので、やめるかと思えば、そうではなく、結局最後まで気持ちよく熱唱したりする奴がいる。実にいやな奴である。自分の音痴をマイクや演奏のせいにしながら、だがしかし、歌う。まずいまずいと言いながらしっかり残さずに食べる奴と同じである。そんな人、いるんですかって、いるんですよ、ここに。そう、この私。今回のカラオケ店で自分を冷静に見ていたら、そうだった。おまけに、インドネシア人教師二人に向かって、「きみたち! ダンドゥットはやめなさいね、ダンドゥットは! 1曲が長いから」などと、我ながらずいぶんせこいことも言っていた。
  そして、「じゃあ最後はみんなで、ぱぁーっと明るい歌で締めくくろっかぁ〜」と仕切って、自分の大好きな元気ソング、「世界中の誰よりきっと」なんかを入れ、頭からサビまでがんがんに歌い、「わー、盛りあがったねー!!」とご満悦なんて、もしかしたら、私が一番のマナーやぶりかも〜〜〜!!

            

 
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